2010年12月9日木曜日

プロローグ&エピローグ 120"


プロローグ 60"
ひとのこころは、帰ってゆく。

だれの胸のなかにもしまわれている
「あ、家に帰る時間だ」という思いを
かきたてるような夕暮れどき。
春と夏と秋と冬。
山や海や野や街をいろどる、
さまざまなニッポンの夕暮れを重ねながら、
帰っていくはずの「その家」を予感させる。
なつかしさとやさしさに満ちた、
そのつながりに、街のざわめきや、
ゆきかう人々のあいさつ、
子供たちの歓声、
子犬の甘え声…。
夕暮れどきを呼び覚ます、
さまざまなニッポンの音が重ねられていく。


エピローグ  60"
ひとのこころが、帰ってくる。
・あなたが家にむかうころ
夕日に染まった川を渡る電車。
私鉄沿線のにぎやかな昔ながらの八百屋。
夕餉の買い出し客と店主のやり取り。
その店先の灯。
子供たちが帰った後の
公園のベンチ脇のさみしい水銀灯。
坂道の両脇に並んだ街灯の灯。
その向こうに夕日。
・灯ともしごろ
マンションの窓。
さまざまな一軒家の窓。
庭の犬小屋のそばの庭園灯…。
ニッポンのあらゆる家々に、
つぎつぎと
【あなた】をむかえるための
灯がともっていく。
・おかえりなさい
坂の上の家。その犬小屋。
坂の下の光景を夕日が染め、
家族の帰りを待つ愛犬の
うしろ姿を浮かび上がらせている。
と、待ち人を見つけたのか、
犬の尾がうれしそうに振られれている。
そのシルエット。

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