2010年11月3日水曜日

七人のこびと作戦成功の夜に

品川でスタッフと別れ、改札の手前で志賀さん達とも別れた。どこかに座って休みたかった。泣きを入れるが、疲労困ぱい。くたくただった。ベンチを探した。ない。休むためには、新幹線の構内に戻り、あの無味乾燥をカタチにしたような待合室を目ざすしかない。で、あきらめコーヒーショップに。JRは、いつのまにかあちこちからベンチを取っ払い、人間をなめ切ったようなどこにいっても金太郎飴のごとき駅の光景をつくってしまった。新幹線の座席はしんじられないほど窮屈だし、3人掛けの真ん中など冗談としか思えない。ため息を百くらいつきながらくそまずいコーヒーを飲んだ。タバコを3本。奄美の暴風雨と台風14号並走と10℃を切った真冬日と昨日未明の東京大雷鳴と竜巻と突風被害…21日から今日2日までの13日をふり返った。金沢、博多、尾張一宮。いずれも一睡もできずもんんとしながら本番を迎え、乗り切った。家に戻り、熱いシャワー。気温は低いようだったけど、身体の芯に熱いものが居座って離れず。さましているところに渡辺から電話。素材を持ってくるという。明日にしようと言いかけ、コトバをのみ込んだ。長岡から渡された撮影データをのぞみの最前列で電源を取り名古屋からずっと変換しつづけていた。品川に着いた時に保存が終わらず、降りずに東京駅に。その渡辺が届けますからというのだから、いいよとはさすがに言えず。おれもまた、ちょっとでも確かめたい気持が。で、昨日1日のスタンバイ中に撮った「まち」の一部を2分あまりにまとめる。金色のすすきのカットをmotion/pictureとして1シーンでいこうと思ったが、ふと気が変わった。足もとに咲いていたオレンジの名も知らぬ小さな花と淡い紫の花、昭和の風景のような1カットを追加し、雲を添えた。川音だけでいってみようと思ったが、手嶌の「家族風景」をあててみたくなった。iTunesからあてる。後半を1分カット。おだやかでなつかしくてなつかしくなるような「金色の時間」が見えた。どこにでもありそうなあらためて見つめることもないような変哲もないまちのかわりばえのしない川の姿と古びた街の光景。きのう、なぜ、ぼくたちがあの光景に魅かれ、むさぼるように収めていったのか、自分の胸の底にある何と共鳴しあったのか、わかったように、思えた。仕事の成果は、明日にまわしたい。これからとろけるような夢も見ない眠りをむさぼり、カラダの痛みが消えていたら、魂を込めて今日の成果を切り出したい。だから、やすらかな眠りのために、今夜は「川のある風景」だれもが目を閉じると思い浮べるような、なつかしくちよっとせつなく美しいショートムービーを、まず13日を戦えたおれ自身にささげてやりたい。それからたぶんこの時間には家にたどり着いたはずのクルマチームに、さらに尾張一宮で後始末のために居残った美しく食欲旺盛なひとりの女性と数人の森の小人たちのような美術チームにささげたい。26人のすべてがそれぞれの場所でやすらかで満ち足りた眠りにつかれることを祈りつつ。愛こそ、すべてだ。

2010.11.2夜 T.M拝


※11.311時追記
OKだしをしながら「七人の小人作戦」という名のきかっけのカットを繰り返しチェック。
うまくいかないだろうという前提というのもおかしいけど
もし、すべてがうまくいけばと、という申し合わせで試みたシーンだった。
床に何人のスタッフがはいつくばってたのか不明だが
なんど再生しても仕込みの気配はゼロ。
動感と期待感にあふれた素晴らしい移動シーンになっていた。

七人の根拠は、こうだ。
カメラマン、撮影助手、特機二人、床這い二人、制作。
この七人の呼吸がちょっとでもズレていたらNGだった。
約60秒の無呼吸移動。おみそれしました。

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