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【月series】vol.3は
立秋の満月月光
1時過ぎに携帯にメール。
コトバを失った。
昨日の午後3時に彼と話した記録有り。
そのときは、
急展開した今日の古河撮影を祝いあい
いよいよ始まるな、と笑いあった。
そして明日の朝、東京駅北口。
ロケバスで会おうと話した。
かなりよくないと聞いてはいた。
でも、その日がこんなに早く来るとは。
彼も、想像していなかった
いやすまいとしていたのだと思う。
かけるコトバもなく
時間が半日すぎた。
10年前の夏。彼の尽力もあり実現した
HD900テスト撮影の【月光】を
月シリーズの第三夜としてつなぐ。
音楽を菊池雅志さんの「紫苑」から
【月光】を借り、あてる。
最後に今日の日付と
古い短歌を二首、はじめと終わりに添えた。
「秋来ぬと目にはさやかに見えねども
風の音にぞおどろかれぬる」
「ともすれば月澄む空に憧れる
心の涯を知るよしもがな」
H.Sに献上、と記した。
子のいない彼にとって、
今日の痛切が耐えられるのか
それだけが気にかかる。
2010.11.16 夜 T.M
> From: 益子自宅
> Date: Tue, 07 Aug 2001 05:17:37
> To: 湯治部 通信
> Subject: [tojibu:00174] リスタート
益子です。
本格的なライブラリーロケとしてはじめての試みは
天気にも恵まれ、きわめて満足のいくものとなりました。
相馬プロデューサーのご英断に敬意を捧げます。
踏み切る勇気があれば、成果は思いのままです。
計算づくではあの映像はものにできなかった。
日常の仕事と超える仕事をきちんと分けられたこと
つまり「遠くまで行くんだ」という瞬間だったわけです。
5日の出来事は夢でも幻でもない。
ああいう時間を生み出せるのは才能を超えた何かだけ。
相馬さんにはその何かが備わっていることが立証されたね。
ぼくはあの夜の出来事が相馬さんの名の元に遂行された以上、
プロデューサーとしての相馬さんの力を最大級に評価します。
以後は、すべて相馬さんの指示にしたがうことを言明します。
がんばれ。あんたが大将だよ。
夏苅さんの大奮闘に感謝を捧げます。
あの酷熱の午後によく気を失わずに頑張った。
ああいう無謀な仕事の進め方は以後控えますが、
音を上げずに君が進行してくれたおかげで
なんとかぶじに最後までやりきることができた。
でも、いつでも音を上げていいよ。
たかが仕事なんだから、まずは自分第一。
そのうえで今日の午後のような頑張りもあればなおよし。
男でも女でも凛々しさがいちばんだ。
きみは、凛々しかった。おつかれさまでした。
おかげで素晴らしい愉しい時間と成果があった。
冷たい飲み物を両腕にかかえて坂道を走ってくるきみの愛が
倉持さんや長岡くんのもう一踏ん張りを生んだ。
愛は想像力。想い描く力だ。
想像力だけがこんどのような奇蹟の時間をもたらしてくれる。
倉持さんをはじめ撮影部のみなさんには何も言うことなし。
湯治部らしいみごとな遊びぶり、いや仕事ぶりだった。
細部にこそ神は宿る。自然もまた細部にこそすべてがある。
ほとんどのカメラマンはこの細部をとりちがえ
単なるミニマリズムのお化けになるけど、
愛と想像力を持つ才能だけが、その境界を越えていく。
十年以上に渡る倉持さんとの仕事を通して、
ぼくはそのことを教えられてきた。
こんどの南会津ロケであらためてそのことを痛感しました。
花一輪、水面のさざなみひとつで、
これほど魂を揺り動かすカメラマンをぼくは知りません。
人もモノも自然も、
これほど愛情あふれる映像をつくれるカメラマンを
ぼくは知りません。
あの年齢でどうして作為を越えて表現できるのか、
不思議でならない。
広告がつまらないのは、
すべてこの作為を越えきれないところにある。
時に越えた表現者の仕事だけが後世には残るけど。
畑からとうもろこしをとってきてゆで、チーズケーキを焼き
冷たい氷水と大広間での昼寝を供してくれる宿、というのも
またこんどの仕事にふさわしい不思議な存在だった。
あれがホスピタリティの原点だよ。旅籠の原点。
対価なしであのホスピタリティを引きだしたのはもちろん
みなさんが前夜と早朝に見せた真摯な仕事ぶり。
共感がうまれちゃうんだよな、ああいうときには。
どっかで何かを越えちゃうんだよ。
畳の上で蝉しぐれを枕に大の字になっている諸君を見て
ぼくは今年いちばん幸福な気持ちになれました。
まことにひさしぶりに湯治部の湯治部たる仕事ぶりに接し
感無量であります。やっと帰還できた気がしています。
メーリングなので意味がよくわからない方もあろうが
ま、なんだかマシコはこんな気分であるらしいと
ご理解ください。
生まれてはじめてオニヤンマの孵化を目撃し
ややハイになったかな。
2001.8.7 立秋 リスタート記念 益子 透
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