夢はいつもかへって行った
山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへった午さがりの林道を
うららかに青い空には陽がてり
火山は眠ってゐた
…そして私は
見て来たものを 島々を
波を 岬を 日光月光を
だれもきいてゐないと知りながら
語りつづけた……
夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ
忘れてしまったときには
夢は
真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて
寂寥のなかに
星くづにてらされた道を
過ぎ去るであらう
立原道造
1936年11月詩誌「四季」に発表後、
翌1937年7月私家版詩集“萱草に(わすれぐさ)寄す”
sonatine no.1の5番目の詩として収められた
3 件のコメント:
やはり、これをやってみたい。
ストレートではなく
やはり福島さん、か。
三日月を眺めた3日夜。
カプチーノにほどこされたウサギの絵。
これは月を恋するウサギである。か。
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