2011年8月4日木曜日

その炭に火をつけるんよ




「その炭は売らなんだ
一本も売らなんだ
ぜんぶ自分の家に運んだだ」

「なんでじゃ?」

「なんでゆうてもな
売れなんだよ
どうしても
売る気にならなんだな
長い冬
話し相手もないもんでな
ひとりでじっと暮らしておって
みょうに淋しゅうなったときにな
その炭に火をつけるんよ
するとな
胸がぽっと
あったまるんじゃ」


今井保之
手書き童話《女鬼》より抜粋












千年相聞番外編 《女鬼》


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