2010年10月9日土曜日

ひらく。



未開の自然の中に
人々が住むということは、
  漆黒の闇を
松明の灯で照らすようなもので、
  それが啓蒙であり開明であった。

  もっともカイメイには
晦冥という字を
あてることもあるが、
  晦も冥も暗いということなので、
  開明とはまったく逆の意味になる。

 「開明とは、光なのですね」

 「しかし、それは闇を
松明の灯で照らすようなもの。
 そこだけは明るいが、
周囲の闇はよりいっそう
 暗さがきわだつ。
灯がなければ、
闇は闇ではない」

 「では、闇のままで
あった方がよかったと?」

 「いや、人が生きるということは、
 闇をひらく
ということにつながります。
 《晦冥》を知ることが
 すなわち《開明》であると
申しておきましょう」

 -夢熊野-紀和鏡より



日本郵船歴史博物館の企画書のタイトルは
【日本を、ひらく。】
その根拠となったのが紀和鏡の小説の一節だった。




0 件のコメント: