未開の自然の中に 人々が住むということは、 漆黒の闇を 松明の灯で照らすようなもので、 それが啓蒙であり開明であった。 もっともカイメイには 晦冥という字を あてることもあるが、 晦も冥も暗いということなので、 開明とはまったく逆の意味になる。 「開明とは、光なのですね」 「しかし、それは闇を 松明の灯で照らすようなもの。 そこだけは明るいが、 周囲の闇はよりいっそう 暗さがきわだつ。 灯がなければ、 闇は闇ではない」 「では、闇のままで あった方がよかったと?」 「いや、人が生きるということは、 闇をひらく ということにつながります。 《晦冥》を知ることが すなわち《開明》であると 申しておきましょう」 -夢熊野-紀和鏡より |
日本郵船歴史博物館の企画書のタイトルは 【日本を、ひらく。】 その根拠となったのが紀和鏡の小説の一節だった。 |
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