2010年11月2日火曜日

一宮の空と雲のこと 10.11.1

一宮にて。
浜松を通過したあたりからも青空。
現地に着いたのは2時過ぎ。
スチールが佳境だったので
下見をした後、近くの空き地へ。


雲が、夏と秋と冬。同居。


この一ヶ月、サンセットに取り組んで学んだ
「街」を入れ込む、をさっそく試す。
不細工な電線も、パッとしない家並も
変哲もない用水も、すべてが人の営みなのだ。


で、空に挑む。
見たこともない、と書いてしまえば
身も蓋もない。
でも、見たことのない、そういう空の景色だった。


空がというより
倉持正美というひとりのキャメラマンを通して
切り取られた「空の風景」が、
背筋が寒くなるほどの
叫び出したくなるくらいの
言葉にしがたい、透明さに満ちていた。


ぼくの仕事は
彼の耳に聴こえるようにため息を吐き
ときおり、いいなぁ、とうなってみせること。


空き地から歩いて数分の小さな川べりに。
そこでもまた、時間と場所を忘れ去るような
こころの箍をはずされてしまったような
じぶんの胸の中にしまいこんでいた
原風景のような「まち」の風景が。


足下に咲いていた小指の先ほどの
小さなちいさな赤い花を
うずくまるようにしてとらえた。
秋の終わりの風に揺れる名も知れぬ花が
昨日、ひさしぶりに観た緋牡丹博徒の
凛冽なせつない美しさをよみがえらせた。


一時間あまり、散歩のおりに
ふいと切り取ったようなどこにでもあるような場所で
だれも見たことのない しかし
だれのこころにもひめられているような
うつくしく鮮烈な秋の夕を、撮った。


現場に戻り、夕景の準備にかかった時
立ち上がれないほど疲れていることに気づいた。
おれもまた、彼とともに戦っていたのだと
ふと、思った。


撮影;倉持正美
CA;矢野まい
VE;長岡茂樹


立ち会い
渡辺、鈴木、宮島、益子















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